AProの走行性能を支える4つの技術

1.三相交流モータの特性

(1)省電力運転ができる

三相交流モータをインバータで駆動することにより、電気エネルギを機械エネルギに効率良く変換できるため、少ない電力での走行が可能(直流分巻モータに比べて小容量のバッテリで同等の走行性能を発揮する)。

(2)高度なモータ制御ができる

高性能ベクトル制御形インバータを採用し、三相交流モータでトルクや回転数の高度な制御を実現している(直流分巻モータはベクトル制御ができない)。

(3)滑らかな回転を可能にする

三相交流モータは磁界が途切れることがなく直流モータに比べ連続した機械出力が得られる。

(4)ブラシレスのモータなので摩耗する部品がない

直流モータに必要なブラシは、回転子(ロータ)に接触して使用するために摩耗する。そのため、定期的な交換などの整備が必要となる。それに対して三相交流モータは電磁誘導で回転子を回すため、ブラシのように摩耗する部品がなく、メンテナンス費用の削減につながる。

2.独自の制御技術

(1)優しくスムーズな「発進」

回転数の急激な変化を制御することにより、タイヤの空転を防止できるため、フェアウエイ走行時の芝生への負荷を軽減できる。また、車両の後退がないスムーズな坂道発進を実現している。

(2)心地よい「加速」

目標速度に達する時間を短縮しつつ、急なアクセルワークに対しトルクの変化を制御することによって、スムーズで心地よい加速を実現している。

(3)ストレスを感じない安定した「定速走行」

回転数とトルクを個別に制御できるベクトル制御を行うことにより、坂道などの負荷変動に対して、車速変動を抑えることができる。

(4)確かでスムーズな「減速」

モータに負のトルクを発生させて、発電機として作用させ、発電時の回転抗力を制動力として利用する回生ブレーキを採用し、確かな減速性能と省エネ性能の両立を実現している。また、マニュアル走行時において、フットブレーキと協調して回生量を制御することによって、スムーズな減速を実現している。

(5)モータ回転数ゼロ時の「停止」を実現

ベクトル制御することにより、モータ回転数ゼロの時にもトルクを発生させ、停止状態を維持できる。車両完全停止後にオートパーキングブレーキが作動する。車両完全停止後は電磁ブレーキ(オートパーキングブレーキシステム)が作動する。

(6)ブレーキオーバーライドシステムを採用

アクセルとブレーキが同時に踏まれた場合、安全のためにブレーキが優先して駆動力を制御する「ブレーキオーバーライドシステム」を採用(電磁誘導走行時の運転指令を含む)。

3.高出力モータの採用

定格4.6kW(最大出力11kW)の高出力モータを搭載することにより、他社にはない登坂性能と加速力を実現すると同時に、強い制動力を発揮する回生ブレーキを可能にした。

Ⅱ 先進のリチウムイオンバッテリを搭載


1.鉛バッテリの4倍のエネルギ密度

リチウムイオンバッテリは他の電池に比べてエネルギ密度が高いことが特長である。エネルギ密度が高いと、電池が同じ容量の場合、小型で軽量のバッテリを作ることができる。

リチウムイオンバッテリの重量エネルギ密度は155Wh/kg、体積エネルギ密度は400kw/Lと、鉛バッテリの約4倍のエネルギ密度となる。

2.長期間の使用が可能

鉛バッテリは劣化が激しく2~3年に1回の交換が必要なうえ、電解液の補充が必要になる。それに対してリチウムイオンバッテリは、電解液の補充の必要性も無く、メンテナンスに要する時間とコストが節約できるだけでなく、適切な条件で使用することにより、バッテリメーカーが公表しているスペック値の2~5倍程度まで、バッテリ寿命を延ばすことができる。「APro」に搭載しているリチウムイオンバッテリシステムは、1回の充電で走行可能な航続性能とバッテリ寿命を長く保つ耐久性能をバランス良く両立できるように設計されている。

ちなみに、ここで“寿命”とはバッテリの容量が50~60%程度に減ることを言い、完全に使えなくなる状況ではない。しかしながら、寿命が訪れた後、それまでより早いスピードで劣化が進み、容量が更に減って行くこととなり、最終的には使用不能な状態になる。

3.リチウムイオンバッテリを長持ちさせる方法

(1)リチウムイオンバッテリが劣化する主な原因は「サイクル劣化」と「経年劣化」の二つである。

私たちに身近なスマートフォンはリチウムイオンバッテリを使用している。2~3年も使うと、充電してもすぐに電池の容量が減ってしまう劣化現象が顕著に表れる。劣化の原因は、充放電を繰り返すことによって発生する「サイクル劣化」と、バッテリを使わずに放置しておいても発生する「経年劣化」の二つである。サイクル劣化と経年劣化を遅らせ、バッテリ寿命を延ばすためには、次項(2)(3)に記載するポイントを押さえた使用方法の徹底が重要になる。

(2)満充電を回避することでサイクル劣化を遅らせることができる

リチウムイオンバッテリは、満充電を避けて、低い充電状態(80%程度充電した状態)で使用を繰り返すことで、劣化を遅らせ、寿命を延ばすことができる。私たちの多くはスマートフォンを使ったら、毎日、100%まで充電して使っている。これがバッテリの劣化を早める要因となる。ゴルフカーにおける利用を考えると、80%程度に充電した状態で使用し、次の1ラウンドを走行するために必要な容量が無くなったら、また80%程度まで充電するやり方が、劣化を遅らせ、寿命を延ばす現実的な方法となる。

(3)適切な充電状態を保ち、高温多湿を避けることで経年劣化を遅らせることができる

満充電状態(100%)、完全放電状態(0%)、高温多湿状態での保管は経年劣化を早める要因となる。3ヶ月、6ヶ月と長期間使用しない場合は、高温多湿を避け、自己放電によって完全放電状態にならないように、50%程度放電した状態で保管することで劣化を遅らせることができる。

4.BMS(バッテリ・マネジメント・システム)でバッテリの状態を管理

バッテリ・マネジメント・システムは、リアルタイムにリチウムイオンバッテリの総電圧、残容量、入出力電流、各セルの電圧や温度などをモニタリングし、バッテリを管理するシステムで、過放電及び過充電にならないように自動制御している。BMSを搭載し、バッテリを適切に管理することで、事故や故障を未然に防止し、バッテリ劣化の進行を遅らせることができる。

5.環境に優しいリチウムイオンバッテリ

鉛バッテリに使用されている鉛は環境負荷物質であり、環境への放出による健康影響や環境汚染の恐れがある。リサイクル等への取組みもなされているが、そのリサイクルや廃棄については、様々な問題が発生している。一方、リチウムイオンバッテリには鉛のように環境負荷が大きな有害物質は含まれていない。

Ⅲ 四輪独立懸架式サスペンションの採用

出典:https://nihon.michelin.co.jp/recruit/newg/technology/

1.高い路面追従性能を発揮する四輪独立懸架式サスペンションの採用

他社製品が車軸懸架式サスペンションを採用しているのに対して、「APro」はあえて車軸懸架式に比べて構造が複雑で開発が難しく、コストも高くつく、乗用車に採用されている四輪独立懸架式サスペンションを採用している。

四輪独立懸架とは四輪すべてが独立して働く懸架装置で、左右の車輪が車軸で繋がって動作する車軸懸架式に比べ、車室内のレイアウトの自由度が増大し、車室フロアや重心高を低く設計できるだけでなく、バネ下重量が軽く、前後左右の車輪が独立して上下に機敏に動作するため、路面の凹凸に対する追従性が高く、優れた乗り心地と操縦安定性を実現できる。また接地性が良いため、特に後輪駆動車の場合は、左右の車輪の駆動力を効率よく路面に伝達することができる。

2.サスペンションにはマクファーソンストラット式を採用

マクファーソンストラット式サスペンションとは、コイルスプリングやショックアブソーバー、ロアアームで構成されるシンプルな構造のサスペンションで、乗用車用のサスペンションとして世界的に最も多く採用されている方式である。部品点数が少なく、重量も抑えられるほか、ストローク長を確保しやすいため路面からの振動を大きな範囲で吸収できる特徴をもつ。

1.フロントに大型ディスクブレーキを採用

フロントに安定した制動力が出せる大型ディスクブレーキを採用。ディスクブレーキはドラムブレーキに比べて放熱性と排水性が良く、繰り返しブレーキや雨天時などの水に濡れた時でも安定した制動力が得られるという特長をもつ。

2.リアに回生ブレーキを採用

(1)回生ブレーキとは?

回生ブレーキとは、モータを発電機として作用させ、発電時の回転抗力を制動力として利用するブレーキである。機械(運動)エネルギを電気エネルギに変換し、電気エネルギをバッテリに戻すことにより制動力を発生させる。

これには、高い“機械-電気変換能力”を持つ発電機(モータ)と電力の受入れ能力の高いバッテリが必要となる。ベクトル制御が可能な三相交流モータは、力行と同等の高い回生(発電)能力が得られ、リチウムイオンバッテリは高い受入れ能力を有する。この2つの組み合わせにより必要な制動力を発生させている。

(2)なぜ回生ブレーキを採用したのか

リアに制御性の高いベクトル制御が可能な三相交流モータを使った回生ブレーキを採用することにより、前後のブレーキ配分を適切にコントロールし、確かな制動性能と操縦安定性能を確保している。また、リアを回生ブレーキとすることで、多くの電力を回収し、省エネルギ性能の向上に役立てている。

(3)回生ブレーキの制動のメカニズム

惰性で回っているタイヤがモータを回転させると、内部で磁界の変化が発生し、コイルに電気エネルギが誘起される。誘起された電気エネルギはバッテリに流れ、その電流がコイルに磁界を発生させ、その抗力が機械エネルギを減少させ、制動力となる。

(4)大容量の電力を回収し、強い制動力を働かせることができる

ベクトル制御が可能な三相交流モータは力行と同等の回生(発電)能力が得られる。このため高出力なモータを採用することにより大きな電力を発生させ、強い制動力を得ることができる。

(5)回生量を変化させることで制動力を増減させることができる

アクセル操作、ブレーキ操作、電磁誘導の運転指令及び車速によって回生量を変化させ制動力を増減させることができる。

(6)発電時の回転抵抗を制動力として利用するため摩耗部品がない

ブレーキパッドのような摩耗する部品がない。

3.フェールセーフ(Fail Safe)

フロントブレーキにスプリット配管方式を採用しており、片系統喪失時にも制動力を確保できる。また、電気系統喪失時には、電磁ブレーキ(オートパーキングブレーキシステム)が動作し、車両を停止させることができるように設計されている。